数学科の彼女
先日、興味深い会話に出くわした。数学科出身のその人へ「高校生の数学の宿題を教えてもらう事はできるか」という相談に対して「できるけど、最近数学をやっていないので時間がかかるかもしれない」と答えた。「最近数学をやっていないので」という言葉が関心を呼んだ。「最近料理をしていないから時間がかかるかもしれない」というのと同じ温度で言ったように感じた。世の中は数学を知っている人達がものを作り上げていることは承知しているが、私が普段生活してる中で数学を思い出すことは皆無である。彼女にしてみたら数学を感じることはなんら不自然ではないそうだ。数学をやるというのはどういう事かと訊いてみたところ「問題を解いてみたり」だそうだ。そして問題を解き始めると没頭してしまい、肩や背中が疲れるから、数学をするためには筋力が必要になるとも言っていた。大人になった私は数学はやらないし、問題も解かない。筋肉の必要を感じるのは駅から自宅まで歩いて帰ってきたその夜、足が痛くなったときである。数学の為に筋肉を必要とする彼女が私と同じテーブルを囲む仲間と思えなかったある日の出来事。