帰りたい家

自分の家に帰りたくなかった。

一人暮らしを始めて、手に入れた自分だけの城。
好きな家具を買って、家電も揃えて、自由に暮らしていくことにワクワクしていた少女の私。
ごめんね。あなたが望んでいた素敵な生活にしてあげられなかった。
学校に、部活に、バイトに、遊びに…いつも忙しくしていた私が帰るのは、安らぎとは真逆の、荒れ果てた空間。

家の中よりも魅力的な世界が、外に広がっていた。一人でいるのが寂しかった。
自分の世話をするということを、甘く見ていた。
そうして、あっという間に4年が過ぎてしまった。

少し大人になって、少し部屋が大きくなっても同じ。
帰ってきて倒れ込んで、最後に掃除機かけたのいつだっけ、なんて、一瞬考えたような気がするけど、すぐにどうでもよくなってしまう。
週末は思う存分寝て、時々遊んで、気づいたらまた月曜日。

気に入らない部屋でするメイクは、いつも不完全に見えた。
大人になったら、もっと完璧にできると思っていた。
慣れたのは、一人でいる時間。ただそれだけだった。

ソファーに座って、新しく相棒になったブランケットに包まれながら、そんなことを思い出す。
部屋を見渡せば、こだわりの家具、カーテン、家電、小物たち。
広いテーブルはツヤツヤしていて、物が少ない床はスイスイ掃除できる。
ああ、なんて良い空間!!

この空間を守ってくれる家に誓った、たった一つの約束。
一日一つの小さな掃除をすること。
どんなことでも良い。
たとえばある日は電子レンジの中を拭いて、ある日は洗面ボウルを掃除する。鏡を磨く日もあれば、軽くホコリ取りをするだけのことも。

もちろんそれができるのは、仕事を含め、今の環境のおかげもある。
でも、何よりも約束を守れている自分に、驚きと、少しの成長を感じてしまう。
今この暮らしをしていることは、過去を振り返ると、涙が出そうなほど嬉しい変化なのだ。

さあ、今日も頑張るぞ。

帰りたい家が私を待っていてくれるから。