イケアで買ったベッドを組み立てた。筆者は家具の組み立てが好きなので今回久しぶりに登場した大きめの家具に心が躍った。今回組み立てるベッドは引出とオープン棚が備わった高さのあるタイプで、引出と棚の位置を前後左右、使用者の好みに合わせて組み合わせを決めることができる。我が家の使用者である子供のオーダーはベッドの左側から引出を使いたい、オープン棚は頭側に来るように、とのことだった。「引出は左側・オープン棚は頭側」

 早いところ組み立ててしまいたい我が家の主と、組み立てる工程を楽しみたい筆者の二人で共同作業をすることになった。主はさっさと梱包を解き、部品をガラガラと広げ、説明書を見始めた。先を越された。ここで主導権は主の手に渡った。

「まずはこの板とこの板をこのネジでくっ付ける・・・。っと」

現場監督となった主の指示に従い板を押え、監督が作業しやすいように筆者は次のネジの準備をしてサポート役に徹した。なんとなく骨組みができ始めてきた。しばらくして監督が

「アレ?・・・コレ・・・オープン棚が足元に来るんじゃないかな。」

確かに。オーダーされたのは頭側のはずだが、この組み立て方だと棚は足元に来ることになる。「やり直そうか」と監督に伝えるも「いや、もうこのままで行こう」

綺麗に仕上げて納品したい作業員と、とにかくさっさと完成させて納期に間に合わせたい監督との間に温度差があることが表面化した。仕方がない、監督の指示に従った。そして頭側の化粧板を付け、そろそろ完成が見え始めた頃、作業員は気づいてしまった。引出が右側から引き出す造りになっている。ユーザー(子供)からのオーダーは「引出は左側・オープン棚は頭側」ところが今「引出は右側・オープン棚は足元」という仕上がりに向かって進んでいた。イラストのみのイケアの説明書を遡って確認し、監督は深いため息を一つつき

「ここで間違えたんだ・・・。」

説明書を覗くと間違えたのは1ページ目の工程1番。組み立てるタイプを選ぶ最初の分岐点。

「で、次にここで間違えたのか・・・。」

説明書の中には分岐点が合計二回ある。そのうちの二番目を更に間違えたのだ。つまり全部間違えたのだ。

「とりあえず今日はここまでにしよう。」

彼の心からポキリという音が聞こえた気がした。

 戻れる工程まで戻ってやり直すことにした。きつく締めたネジを外す途中、板の一部が割れた。もう終りだと誰もが思った。しかし、ここで諦める訳にはいかなかった。割れた部分をボンドで補修し、作業を続けた。次第にバラバラだった気持ちが一つになり、目標達成に向かって突き進んでいるのが分かった。監督は言った。

「34番っ、ダボっ。」

小声ながらもはっきりと力強くダボを確認した。失敗を繰り返す愚かな自分達がドラマチックに思えてきた。勘違いが始まった合図である。気分はプロジェクトXになってきた。脳内で地上の星も再生されている。監督は右にあったゴミを左に移動させた。

「オッケー。」

ハンマーを床に置いた。

「オッケー。」

オッケーなのだ。気づけば窓の外は真っ暗になっていた。出来上がったベッドは「引出は左側・オープン棚は頭側」顧客のオーダー通りである。互いに笑顔になった。

 今回購入した家具はベッドの他に勉強机と外付けの棚がさらにある。次はきっと、もっと笑顔で組み立てられるだろう。そして楽しみにしていた次の休日、外出から戻った筆者は完成された外付けの棚の姿を目にした。ネジ一本触っていない。監督は組み立てる楽しみでもなく、チームワークでもなく、納期最優先だった。

チクショウ。

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